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あとがき
「鳴呼、寮長」は、かなりの部分で本当にあった話である。であるから、実在した寮生、もしくは関係者に迷惑がかかるので、人名や固有名詞はすべて架空の設定とした。
この原稿が書かれたのは、平成九年である。ここに登場する寮生達が青春を謳歌したのは、昭和四十二年から、四十五年のわずか三年間である。そして三十年の年月が流れた。三十年という長い時間がたったが、あの三年間は、私にとって昨日の事のように鮮明である。静かに思いに耽ると、忘れかけていた記憶がどんどん蘇るのである。それほどあの三年間の出来事は、私にとって素晴しいことであった。
十八才に寮に入って、二十二才で寮を去る四年間に、寮生は見事なまでに大人に成長する。単に歳をとって大人に成るのではなく、人間として大人に成長するのである。これは、同時代の青年には決してありえないことである。寮生活において、先輩、後輩との日常的な関わり合いにおいて、磨き上げられた結果である。しかし、この寮生の関係は、学生運動を境にして、終止符を打った。この事の確認は、私が寮を去って二年目、挨拶に回った寮生達の通った店々で知らされることとなる。
村岡誠二という一人の寮長を通して、この事を鮮明に書き残すことが本書の目的である。書かなければならない事はいっぱいあった。しかし、限られた頁数の中で、精一杯書いたつもりである。同時代を学生寮で過ごした青年よ、我々はこの素晴しき記念碑を胸に抱いて生きていこう。
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